研究概要 |
大腸菌の全長およびN末端7残基欠失T蛋白質(それぞれET,ETΔ7と表記)を組換え発現,精製し,同様に精製した大腸菌H蛋白質(EH)およびmethylenetetrahydrofolate (CH_2-THF)存在下で1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide (EDC,距離ゼロのNH_2基とCOOH基間の架橋剤)を用いて架橋したところ,分子量からETあるいはETΔ7:EH=1:1と推定される架橋体が得られた.ET-EH架橋体をlysylendopeptidase処理し,HPLCで分離するとETとEHの分子間架橋に加えてETのN末〜75残基と中央部との分子内架橋に由来するピークが認められた.この分子内架橋はEH依存性,CH_2-THF非依存性であった.一方ETΔ7-EH架橋体ではETΔ7分子内架橋は認められなかった.これらの結果はET-EH複合体形成に伴ってETのN末端と中央部とが近接した二次構造をとるが,N末7残基が欠失すると同じ構造をとらなくなるためEHとの親和性低下につながっていると推定された.またCH_2-THFに^<14>C-glutamateを酵素的にとりこませて,生理的基質であるmethylenetetrahydropteroylpolyglutamate (CH_2-H_4PteGlun,nは3あるいは4)を合成し,HPLCで精製してEDCによるETとの架橋を行った.得られた架橋体はET:CH_2-H_4PteGlu n=1:1で,そのlysylpeptide分析からETのC末端領域に位置するlysine残基と基質のglutamate tail間に架橋が形成されていることを示唆する結果が得られた.このlysine残基は現在一次構造が決定されている7種の動物,植物,細菌のT蛋白質全てに共通に保存されている残基である.
|