研究概要 |
1 マウス骨格筋cDNAライブラリーより、AREC3/Six4cDNAを3種単離した。ホメオドメインとシックスドメインをもつ、新たな遺伝子ファミリーであると判明した。特異的DNA結合には、ホメオドメインとシックスドメインの両者が必要であること、タンパクのC末端に転写活性化ドメインが存在することを見いだした。筋芽細胞の分化に伴い、細胞質での本タンパク質の発現が亢進すること、網膜の層構造の形成に伴い、発現部位が変化することから、本因子が発生や分化に関与する因子であると考えられた。 2 網膜cDNAライブラリーから、マウスSix2,Six3およびSix5の各cDNAを単離できた。AREC3/Six4に加えて、これらのSixファミリー遺伝子が網膜で発現していることを、In situハイブリダイゼーションにて確認した。また、各遺伝子のホメオドメインとシックスドメインと特異的DNA結合ドメインとして機能しており、結合特異性は、Six2,Six4およびSix5の間で保存されていることを証明した。 3 ラットの網膜でのAREC3の局在を解析した。生後1日では、神経筋細胞の核に、4日ではそれに加えて内顆粒層に、7日では内顆粒層の外側の細胞に局在する。生後13日では、神経筋細胞での局在は核から細胞質に移行し、外節や内節にも局在する。生後20日以降は核への局在は見られない。ラット脳においては、海馬及び梨状野の細胞核にAREC3タンパク質の局在が、細胞質にmRNAの局在が見られた。 4 マウス胚を発生段階を追ってAREC3を抗体染色で解析したところ、9.5日胚の段階から多くの神経細胞の核に染色がみられ、10.5〜11.5日をピークに染色が最も強くなり、14.5日にかけて染色がなくなってゆく。 これらの結果から、本因子が神経や網膜の発生・分化に重要な役割を果していることが示唆された。今後、Sixファミリー遺伝子全体の生体機能の解明に向けて、研究を続けたい。
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