転写因子IRF-1の解析から、IRF-1が癌抑制遺伝子として機能すること、アポトーシスや細胞周期の制御に重要であることを明らかにしている。IRF-1の転写制御機能はmRNA及び蛋白の発現レベルで制御されていると考えられているが、生体防御系の制御及び癌抑制等、多岐にわたる作用を考えると、IRF-1蛋白自身の修飾ないしco-factor等により、その機能の発現がより詳細に制御されている事が想像される。そこで、本年度はIRF-1に結合する蛋白を同定し、その機能を解析することを目的に実験を行った。 大腸菌で作成したGST-IRF-1融合蛋白を用いて、ヒトK-562細胞核抽出液よりIRF-1結合蛋白を同定した。そのうち、38kDaの蛋白が、細胞周期依存的にIRF-1に結合することから、IRF-1の癌抑制機能の制御に関する事が推測された。そこで、この蛋白を精製し、アミノ酸配列を決定した所、核内リン酸化蛋白として知られるnucleophosmin(NPM)と一致した。そこで、NPMの機能を分子レベルで解析した結果、NPMがIRF-1のDNA結合能を特異的に阻害し、それによって転写活性化を阻害することを明らかにした。更に、NPMの発現が多くの白血病細胞(患者サンプル)で亢進していること、NPMを高発現させたNIH3T3細胞がトランスフォームすることを見出した。更に、p53及びIRF-1両因子欠損マウスがp53欠損マウスに比べてより癌化しやすいことを見出し、現在その分子機構の解析を進めている。
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