インターフェロン系の制御因子IRF-1の機能分析から、IRF-1が癌制御遺伝子として機能する事、アポトーシスの制御に重要である事を明らかにした。そこで、IRF-1欠損マウスの活性化成熟T細胞では放射線にによるアポトーシスが起こりにくい事、アポトーシス関連因子であるICEの発現がIRF-1によって制御されている事を明らかにした。また、IRF-1欠損胎児線維芽細胞(EF)を用いて、X線照射、抗癌剤投与によるDNA損傷時の細胞周期の変化を、野生型およびp53欠損EFと比較、検討を行った結果、野生型EFではG1停止が認められたが、IRF-1欠損EFと同様に細胞周期の停止が認められず、CDK2、CDK4活性もIRF-1、p53欠損EFでともに制御されないことが判明した。そこで現在知られている全てのCDK制御因子の発現を検討した結果、p21の発現のみがIRF-1欠損EFで低下しており、またDNA損傷による発現誘導も認められなかった。さらにp21のプロモーターにはp53結合部位の他、IRF結合部位に類似した配列が存在すること、p21遺伝子プロモーターがIRF-1及びp53によって協調的に活性化されることを見出した。更に、IRF-1結合蛋白を同定した結果、核内リン酸化蛋白として知られるnucleophosmin(NPM)と一致した。そこで、NPMの機能を分子レベルで解析した結果、NPMがIRF-1のDNA結合能を特異的に阻害し、それによって転写活性化を阻害することを明らかにした。更に、NPMの発現が多くの白血病細胞(患者サンプル)で亢進していること、NPMを高発現させたNIH3T3細胞がトランスフォームすることを見出した。
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