健常人のボランティア12名で飲酒実験を行った。空腹時に体重kg当たりアルコール0.4gを飲ませて0、1、2、3、4時間後に採血し、血中エタノール、グルコース、ピルピン酸、乳酸濃度をガスクロあるいは液クロで測定し、各物質の血中濃度の変動を調べた。これら被験者の酵素型(アルコール脱水素酵素2型、アルデヒド脱水素酵素2型、チロクロームP450 2E1型)はPCR-RELP法によって予め決定し、型の組み合わせを考えておいた。これらの飲酒実験は約2週間の禁酒後と同期間の継続飲酒後の2回、同一人で行った。その結果、血中グルコース濃度は禁酒後飲酒実験で飲酒1時間後に約7%から33%の低下が認められた。継続飲酒後に測定するとこの低下は抑えられその値は約3%から25%になった。飲酒によるチトクローム酵素の誘導によって、それまで生じていた糖新生の阻害が抑えられたことをこの結果は示している。継続飲酒後の血中グルコース濃度値の回復と酵素型との関連性を検討したが、ADH型とALDH型の特定遺伝子とこの傾向に相関は認められなかった。また、飲酒によって酵素が誘導されるCYP 2E1 C2型では必ずこの現象が現れたが、C1型でも同じ傾向が認められた。このことは、現在調べているチトクロームP45 2E1のC1 C2型以外に特異DNA塩基配列をもつ遺伝子型が存在しているか、他にも誘導されるチトクローム酵素が存在している可能性があることを示している。 アルコール代謝過程で生じる酸素欠乏による肝障害発症機構を明らかにするための動物実験については、エタノール含有液体飼料によるラット飼育を現在行っており、肝障害のマーカー酵素であるGOT GPTの活性測定法の検討を行っている。
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