研究概要 |
1995‐1997年の2カ年間における赤血球膜蛋白分画4.2の研究成績を以下に示す。 1.先天性溶血性貧血症例における赤血球膜淡白分画4.2(P4.2)異常について: (1)P4.2完全欠損症 (1)P4.2遺伝子異常: P4.2Komatsu(523GAT→TAT)とP4.2Shiga(371CGC→TGC)の新たな遺伝子異常を発見した。 (2)分画3(B3)遺伝子異常. 新たな2種の遺伝子異常を発見した。 第1は、B3Okinawa例で、allele Okinawa(G714R)+Memphis II polymorphism(K56E+P854L)とallele Fukuoka(G130R)の二重ヘテロ接合体であった。この遺伝子異常によりP4.2の完全欠損に加え、著明なB3欠損を生ずると考えられた。 第2は、世界で初めてP4.2+B3複合型完全欠損症を発見した。その病因はB3遺伝子異常に基づき、codon646のC→T一塩基置換によるnonsense mutationであることが判明した。 (2)P4.2部分欠損症 多くはB3部分欠損を伴う遺伝性球状赤血球症(HS)であることが判明した。 HS30例についてB3遺伝子のSSCPスクリーニングを行ったところ、5,12,17,19exonに遺伝子異常が発見された。 (3)P4.2variant P4.2doublet Nagano(72/74kD)の病因について、遺伝子解析及び生化学的検討を行った。 その成績はP4.2遺伝子のexon10にR488Hとなる異常がヘテロ接合体として発見された。 2.赤血球膜の形態形成について: (1)ヒト赤芽球においる膜蛋白発現 赤芽球においてはspectrin,glycophorinとB3が始めに発現し、分化に従いband4.1とankyrinの発現がみられ、さらにP4.2は最も分化した赤芽球で発現することが判明した。 (2)P4.2の生理的機能 生化学的及び免疫電顕的検討の成績から、P4.2がスペクトリン骨格網とB3蛋白とを直接連結するアンカー的役割を果たしている可能性が示唆された。
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