研究概要 |
本年度はヒトGATA-2,-3に対するin situハイブリダイゼーション(ISH)をおもに胃・大腸の癌と炎症性病態を用い実施した。まず、固定条件の設定については、すでに我々が報告した4%パラフォルムアルデヒド+0.5%グルタールアルデヒドが有効であることを確認した。常法に従いデコキシゲニン標識RNAプローブを作製し、ISHを実施した。その結果血管内皮に留まらず、広範な発現を確認した。以下それを記す。炎症については消化管の炎症性病態の代表である潰瘍性大腸炎とクローン病をもちいた。GATA-2,-3とも潰瘍形成部においては血管は潰瘍面の直下で陰性、強い炎症巣の次の領域の小静脈に陽性であり、炎症の少ない領域では再び陰性であった。正常組織の血管は基本的に陰性。また、もう一つの血管新生の代表である癌間質の血管内皮では陰性であった。一方、予期しなかったことであるが、がん細胞においてGATA-2,-3とも強く発現されていた。さらに炎症性病態では浸潤したリンパ球、とくにT細胞につよく発現されていた。これはある程度予測されたことである。以上の結果よりヒトGATA-2,-3の組織内におけるmRNA発現について以下のことが推定された。1)血管内皮細胞については基本的に陰性である。ただ、炎症性血管新生において第一線の次の局面での発現がみとめられる。癌における血管新生には関与していないようである。2)がん細胞に一般に強陽性であり、正常上皮細胞に陰性であるので、癌化への関与が推定される。3)炎症巣でのリンパ球の反応に関与している。よって当初の予想をうわまわる広汎な発現が明らかになりつつある。次年度の課題は組織をもちいてのnorthern blottingであり、また、各種病態での相互比較をさらに追求したい。
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