1.PBCおよびC型慢性肝炎の生検肝を用い、肝炎性胆管障害とPBCの慢性破壊性胆管炎の胆管病変の病理組織学的な違いを検討した。その結果、肝炎性胆管障害はリンパ瀘胞と関連し、PBCの胆管炎では好酸球浸潤や肉芽腫反応が高率にみられることが示された。 2.免疫組織化学的に、C型慢性肝炎の肝炎性胆管障害部では、正常肝内小型胆管では発現しないMUC1アポムチンが高率で発現していることが示された。このMUC1アポムチンは細胞障害性T細胞の認識に関与しているとされ、C型慢性肝炎の肝炎性胆管障害とPBCの慢性破壊性胆管炎の共通の免疫機構が関与する可能性が示された。 3.ホリマリン固定パラフィン切片と凍結切片を用い、C型慢性肝炎の肝炎性胆管障害とPBCの慢性非化膿性破壊性胆管炎の周囲や上皮層内に浸潤しているリンパ球の表面マーカーを免疫組織化学的に解析し、さらに樹枝状細胞を含めた抗原呈示細胞の出現状態と胆管病変との関連性等を検討した。さらに、障害胆管上皮に発現している種々のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IFNγ、TNFα、TNFβ)の発現とヘルパーT細胞との関係を検討し、両者の類似性と違いを明かにした。 4.C型慢性肝炎に伴う肝炎性胆管障害と、PBCの慢性破壊性胆管炎が、異なった機序から発生してくる可能性が示され、両疾患における胆管病変の病態を解明する端緒を示し得た。
|