1.in vivoの研究成果 (1)アポトーシス細胞(ア細胞)は正常胃粘膜では稀であるが、腸上皮化生では散見された。腺腫30病変では軽度異型群より高度異型群でア細胞の分布密度が高かった。腺腫と癌腫が存在していた15症例でア細胞の比率を比較すると、前者では4.9±2.1、後者では3.9±1.1であり、前者で高かった(P<0.05)。他方、増殖活性は後者で比率が高かった。 (2)p53遺伝子変異胃癌と野生型p53遺伝子を示す胃癌を各々15例抽出し、ア細胞の分布密度を比較すると、前者では4.9±1.2、後者では3.8±1.4であった(P<0.05)。 (3)リンパ球浸潤を伴うEBウイルス関連胃癌17例では他のいかなる組織型の胃癌よりもアポトーシス細胞の分布密度が有意に低かった(P<0.05)。 (4)胃癌患者(10症例)に制癌剤である5FUを500mg/日、術前7日間静注したところ、胃癌細胞のアポトーシスは、非投与群(10症例)に比較して有意に増加した。 2.in vitroの研究成果 (1)ヒト胃癌胃癌培養細胞株に5FUを1mM添加すると、野生型p53遺伝子を有するMKN-74、MKN-45ではアポトーシスが生じ、p21/waf1およびBax蛋白の発現が亢進した。他方、変異型p53を有するMKN-28とp53欠失KATO-IIIではアポトーシスが誘発されなかった。 (2)ヒト胃癌培養細胞株6株では種々の程度にFAS抗原が発現していることが確認された。発現レベルは野生型p53遺伝子を有するMKN-74とMKN-45で高かった。抗FAS抗体(1000ng/ml)添加によるアポトーシス誘発はFAS抗原発現量と相関していた。 (3)タキソ-ル(1μM)は細胞をG2/M期に停止させ、その後にアポトーシスを誘発することがヒト胃癌培養細胞株で示されたが、p53遺伝子変異とは関連がなかった。 以上、in vivoおよびin vitroの検討からヒト胃癌細胞におけるアポトーシス誘発には様々が経路が存在し、情報伝達の一部はp53蛋白が関与していることを明らかにした。
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