研究概要 |
研究代表者は当教室で樹立したヒトリンパ腫B細胞株(HBL-1,HBL-2,HBL-6:びまん性リンパ腫大細胞型由来、HBL-4,HBL-5,HBL-7,HBL-8:バ-キット型リンパ腫由来)とJCRBから供給されたヒトBリンパ腫細胞株(Raji,Daudi:バ-キット型リンパ腫由来)をsevere combined immunodeficiency(SCID)マウスに皮下移植した結果、遠隔臓器(特に脾、骨髄、卵巣)に高率に転移する株(HBL-2,HBL-7,HBL-8)とほとんど転移しない株(HBL-1,HBL-4,HBL-5,HBL-6,Raji,Daudi)とに分けられた。この転移能の差を明らかにするため、種々のレクチンを用いた糖鎖の解析をフローサイトメトリーで検討した。その結果、SBAレクチン結合性が遠隔転移能と関連していることが示唆された。すなわち、高転移株であるHBL-7とHBL-8では、in vitroの細胞はSBAレクチンと結合するが、in vivoの細胞(SCIDマウスの皮下移植巣および遠隔転移巣)はほとんどSBAレクチンと結合しなかった。HBL-2高転移株はin vitro、in vivoの細胞ともほとんどSBAレクチンと結合しなかった。一方、低転移株はin virto、in vivo(皮下移植巣)の細胞ともSBAレクチンと強く結合した。さらにこれを確認するため、HBL-7とHBL-8の細胞株からSBAレクチンと結合するクローンとSBAレクチンと結合しないクローンとを選択し、それぞれをSCIDマウスの皮下に移植し、その転移能を検討した。SBAレクチンと結合能を有しないクローンは高率に転移を示すが、SBAレクチンと結合能を有するクローンは転移を示さなかった。また、これら高転移株をノイラミニダーゼ処理するとSBAレクチンと結合することが明らかとなった。 従って、研究代表者らの開発したヒトBリンパ腫細胞株を用いたSCIDマウス転移モデルではシアル酸によってmaskingされたSBAレクチン認識糖鎖(N-アセチルガラクトサミン系)末端分子が転移能と深く関与していることが示唆された。
|