研究概要 |
1.正常胆嚢16例、肝胆膵系の癌で切除された正常胆嚢22例、胆石症36例、胆嚢ポリ-プ13例、膵管合流異常3例、胆嚢癌18例、その他2例の合計110例(男:女、61:49,平均年齢60.9歳)に腺管分離を行った。正常上皮は薄い細胞のシートで、ときに腺管様の折れ込みがあった。癌腺管は厚い細胞塊で、不規則な腺管様構造を示し、実体顕微鏡下で両者の鑑別は容易であった。 正常胆嚢、胆石症、胆嚢ポリ-プ、膵管合流異常など癌を除いた全ての症例で、粘膜上皮のDNA量はdiploidであった。 3.正常胆嚢16症例の頸部、体部、底部でのS-phase fraction(SPF)値を計測した。胆嚢粘膜上皮のSPF値は平均で0.79%、底部で0.81%、体部で0.77%、頚部で0.66%であった。しかし有意差は見られなかった。 4.胆石症例ではSPF値は1.47%で正常胆嚢上皮に比較して有意に高値であった。また同一症例で頸部、体部、底部の部分で比較すると、底部では頸部より有意にSPF値が高かった。このことは癌が胆嚢底部に最も多く発生することと関連があると思われた。 5.膵管合流異常症は症例が少なく、統計的に有意ではないがSPF値1.37%と癌をのぞけば胆石症に次ぐ高値を示し、胆嚢癌発生危険因子群と考えられた。 6.胆嚢癌18例は全例multiploid(diploid+aneuploid)であった。Diploid peakのSPF値(2.5-39.4%)は、正常胆嚢上皮のSPF値(0.3-1.7%)より高くdiploid peakが正常細胞の混在でないことは明らかであった。 7.胆嚢癌が全例diploidとaneuploidを持っていたが、これはわれわれの大腸癌や胃癌の検索でも同様の傾向があり、発癌の過程を考える上で興味深い。腫瘍はまずdiploidの段階で癌化し、次にaneuploidのクローンが現われてくることが想像される。
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