研究概要 |
1.研究目的:TGF-βには細胞増殖抑制作用のみならず,組織発生や分化促進作用があることが知られている.TGF-βの消化器癌の組織形態における作用を明らかにする目的で胃癌・大腸癌のTGF-β,TGF-β受容体,および関連タンパク発現を検討した. 2.対象と方法:以下の標本に対し免疫組織染色法によりTGF-β関連物質(TGF-β1,β2,β3,I型受容体,II型受容体,endoglin, LTBP)の発現を検討した.またin situ hybridizationはnon-specific stainingのため充分な検討はできなかった. (1)胃癌:手術標本25例,腹水胃癌細胞3例,胃癌細胞株(KATO-III, MKN-289) (2)大腸癌:手術標本30例 3.結果:(1)胃癌においては,分化度によりTGF-β関連蛋白の発現に違いがみられた.つまり,低分化型胃癌ではTGF-β1,β2,β3,I型受容体,II型受容体,endogkin共に多くの症例で発現していたが,分化型胃癌では,TGF-β1,β2,I型受容体の発現の頻度が低かった.また腹水胃癌細胞や株化細胞も分化度に応じた発現を示した.(2)大腸癌においては,分化型胃癌類似の発現パターンを示した. 4.考察:胃癌では,分化度によりTGF-β2,β2やTGF-βI型受容体の発現に大きな違いが見られ,その形態にTGF-βが深く関与していると思われる.分化型胃癌と低分化型胃癌は転移様式等でも大きく異なる,今後進展や転移に対するTGF-βの役割を検討する必要がある.大腸癌では,多くの症例が分化型胃癌類似の発現パターンを示すたものの胃癌とは若干の違いがあり,さらに検討が必要と思われる.
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