研究概要 |
1)鼻腔リンパ腫はT細胞マーカーの発現をみることからT細胞性のものが多いとされていたが,T細胞受容体(TCR)遺伝子の再構成がないこと,NK細胞にみられる形態的所見やCD56などNK細胞関連抗原の発現などから,鼻腔リンパ腫はNK細胞の未熟なものや活性型の表現型に一致し,NK細胞リンパ腫と報告した.他の研究者よりも同様の報告がなされ,最近では鼻腔リンパ腫の多くはNK/T細胞リンパ腫と考えられている.またこのリンパ腫はEpstein-Barr virus(EBV)の高率な感染を認め,感染細胞の多くは腫瘍細胞であることを我々を含めたグループが報告した.鼻腔NK/T細胞リンパ腫は鼻腔リンパ腫の約70-90%であり,多彩な核形態を示しアズ-ル顆粒を認める腫瘍細胞からなり、これら細胞の血管周囲性/破壊性増殖とともに広範な壊死をみとめるなどの形態的特徴を呈し,CD56を発現し,TCR遺伝子の再構成を認めず,ほぼ100%にEBVのモノクローナルな感染を認める.一部の咽頭T細胞リンパ腫に血管周囲性増殖,EBV感染を認めるが,EBVはモノクローナルな感染ではなく,CD56の発現もない点は異なる.また鼻腔や咽頭のTおよびB細胞リンパ腫は形態も異にし,またEBV感染も低率である.これらの成績から鼻腔NK/Tリンパ腫は独立した悪性リンパ腫の一亜型であると結論づけた.この結果は平成8年秋期病理学会総会のシンポジウムで発表し,英文雑誌に投稿準備中である. 2)TdTを免疫組織学的にパラフィン切片上で検出可能である事を用いて,リンパ芽球性リンパ腫の組織診断に非常に有用であることを報告した.この方法で鼻腔NK/T細胞リンパ腫の中にリンパ芽球型のものがあり,それにはEBV感染は認められないことを明らかにし報告した.現在このタイプのものはNK/T細胞リンパ腫でより未分化な細胞からなるものとして別に考えられている. 3)鼻腔NK/T細胞リンパ腫と同じリンパ腫が皮下組織を中心とするリンパ腫にみられることを報告した.
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