研究概要 |
正常細胞はNA障害を受けると細胞増殖をG1期で一時的に停止させてDNA修復に必要な時間を稼ぐ能力を備えている。したがって、この機能が失われると細胞は障害を持ったままDNAを複製するため、染色体異常や突然変異が生じる。最近、このようなcell cycle checkpoint機能にはp53を含む様々の遺伝子が関わっていることが明らかになってきた。本研究では共通にマウス肝細胞のbackgroundを持つ正常、不死化、悪性形質転換の3つの階段の細胞についてDNA障害後のcell cycle checkpoint機能を比較することを目的とした。 本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 (1) C3Hマウス肝細胞を長期培養し、多数の不死化細胞株を作製した。また不死化細胞株に活性化H-ras遺伝子を導入して悪性形質転換細胞株を樹立した。不死化細胞では、全例がヌードマウスで造腫瘍性が見られなかったが、H-ras形質転換細胞株は全例造腫瘍性を示した。 (2) UV照射後、正常、不死化細胞ではG1 arrestが見られたが、H-ras形質転換株ではarrestは見られなかった。 (3) UV照射後のいずれの細胞でもp53が過剰発現し、それは蛋白の半減期の延長によるためであった。 (4) 染色体数については、悪性化の段階の進んだものほど染色体不安定化が進んでいた。 (5) 不死化及びH-ras形質転換細胞についてG1 arrestに関係するCipl (WAF1) ,gadd45,mdm2,cdk,Rbなどの遺伝子の発現については現在検討中である。
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