1.抗gp70抗体移入による糸球体腎炎の発症機構:MRL/Iprマウス由来で、同系正常マウスまたはSCIDマウスへのハイブリドーマ細胞移入により糸球体病変を誘発する抗gp70単クローン抗体を、精製IgG分子としてNZWまたはC57BL/6マウスに移入した。血清gp70値の高いNZWマウスで腎病変の発生を認めたが、C57BL/6マウスでは有意な腎病変は生じなかった。従って、病変発生はgp70-抗gp70免疫複合体の形成を介するものと考えられる。 2.組織傷害性抗gp70抗体の認識エピトープ存在部位の絞り込み:レトロウイルスenv遺伝子間のキメラ発現系を用い、腎炎原性抗gp70抗体の反応エピトープの存在部位を限定した。病原性抗gp70抗体の大半は、異種指向性ウイルスgp70分子N-末側に抗原エピトープを持つ。 3.内在性レトロウイルスenv遺伝子産物上のヘルパーT細胞認識抗原エピトープの構造解析:既に我々が同定した外来性フレンド白血病ウイルスgp70分子上のヘルパーT細胞認識抗原エピトープ構造を、内在性レトロウイルスenv遺伝子産物の対応部分と比較した。内在性ウイルス由来ペプチドはフレンドウイルス由来抗原ペプチドと12アミノ酸残基中5残基が異なっているが、うち3残基フレンドウイルスと同じものに置換するとT細胞によって確認されるようになった。 4.血小板表面への内在性レトロウイルスenv遺伝子産物の発現:抗gp70自己抗体産生ハイブリドーマ細胞の同系正常マウスへの移入による血小板減少性紫班病の発症機構を明らかにするため、MRL/1prマウスと対照の正常マウスから血小板を分離し、内在性レトロウイルスenv遺伝子産物の発現を調べた。殆どのマウスの系統で幾つか異なる種類の内在性レトロウイルスenv遺伝子産物が血小板に発現すること、病原性抗gp70抗体がMRL/1prマウス血小板と直接結合することが明らかとなった。
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