研究計画のひとつであったbcl-2遺伝子欠損マウスの腎臓発生異常のメカニズムについては、約90匹のマウスを用いて、発生初期の未分化腎間葉細胞におこるアホトーシスが胎生後期のネフロンの分化が起こらなくなった結果として低形成腎が発症することを報告した。さらに、間葉細胞のアポトーシスによる減数が、尿管芽の分岐や形態形成を停止させ、結果として、間葉細胞の過剰な細胞死を促す可能性をあわせて報告した。 器官培養系での抗bcl-2抗体添加実験では、抗bcl-2抗体添加細胞では、ボ-マン嚢上皮細胞に強い細胞死が見られたことから、bcl-2が糸球体形成過程においてボ-マン嚢上皮の生存に関与することを見いだした。 アンギオテンシノゲン遺伝子欠損マウスでの実験は、水腎症、腎動脈平滑筋の過形成が認められた。さらに、平滑筋と関連したメサンギウム細胞の形質変換を見いだし、アンギオテンシノゲンは生後の血管系、とくに平滑筋細胞の分化を調節していること、それには胎児期からのレニン産生の亢進が関与していることを報告した。一方、腎臓の発生異常は明らかではなかった。細胞レベルで検討するために、マウス器官培養を用いた。遺伝子欠損マウスから摘出した腎臓を外因性のアンギオテンシンIIを加えた培養下だも尿細管や糸球体の形態形成は変わらなかったことから、アンギオテンシノゲンは腎臓の形態形成には必須ではないことをあわせて報告した。
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