研究概要 |
本研究前年度にラット大腸発がん過程でホスホリパーゼA2,シクロオキシゲナーゼ(COX)のmRNA発現は非投与群に対して有意に上昇することを見いだした。今年度はAzoxymethane(AOM)によるラット大腸発癌モデルのうち早期に前癌病変と考えられているaberrant crypt foci(ACF)の発現の化学予防剤による変動を検討した。特に化学予防剤のうち非ステロイド系消炎剤はCOX抑制機能を有しており、今回、最近COXのアイソザイムのCOX-2に特異的抑制を示すNS-398について検討した。 [材料と方法]40匹のF344雄ラットを5群に分け、実験開始から1週間後から3群にAOM(15mg/kg)を皮下注射週1回3週行った。このうち2群は1mg/kg及び10mg/kgのNS-398を経口投与にて週3回実験開始から連続して6週間投与した。他の2群のうち1群はNS-39810mg/kgを上記と同様に経口投与し、残る1群は対照群とした。実験終了時全ラットの大腸粘膜を進展させ、10%ホルマリンにて固定し、メチレンブルーにて染色し、ACFを計測した。 [結果・考察]AOM単独群のACFの大腸粘膜単位長あたりの数は0.97±0.32。AOM+NS-398の2群は,1mg/kgは0.49±0.16、10mg/kgは0.42±0.14でそれぞれ有意に減少した(P<0.001)。他2群はACFは認めていない。これらの結果は従来云われてきたプロスタグランディン(PG)系の特にPGE2の大腸発癌の関与を示唆した。特に今回使用した特異的COX-2の抑制剤のNS-398投与群では胃にびらん等の出血性変化はみられず、従来非ステロイド系消炎剤がCOX-1抑制作用が主であるための胃潰瘍などの副作用が起こる点を緩和し得る可能性が示され、がんの化学予防剤としてより有用性を示した。
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