研究概要 |
本研究の前々年度にラット大腸発がん過程でホスホリパーゼA2、シクロオキシゲナーゼ(COX)のmRNA発現が有意に上昇することを見いだした。前年度はAzoxymethana(AOM)によるラット大腸発癌モデルのうち早期に前癌病変と考えられているaberrant crypt foci(ACF)の発現の化学予防剤による変動をCOXのアイソザイムのCOX-2に特異的抑制を示す非ステロイド消炎剤(NSAID)であるNS-398について検討し、ACFの発現を抑制することを見出した。今年度はより詳細な検討を加えた。なお現在、長期発がんに対する効果も検討中である。 [材料と方法]前年度行った実験を用いて、AOM単独群とAOMと10mg/kgのNS-398投与群とのCOX-1及びCOX-2のmRNAレベルの発現状況と細胞増殖マーカーであるproliferative cell nuclear antigen(PCNA)インデックスを測定し、比較検討した。 [結果・考察]前年度のACF形成能はAOM単独群で大腸粘膜単位長あたりの数は0.97±0.32。AOMとNS-398投与群は,0.42±0.14で有意に減少していた(P<0.001)。AOM単独群でのCOX-1とCOX-2の発現はそれぞれ60.3±11.7と51.5±18.9で、NS-398投与群が52.5±8.0と44.8±4.9と、COXの発現減少傾向は見られるものの、有意な差は見られなかった。一方、PCNAはAOM単独群で8.45±2.43、NS-398投与群が6.17±1.49と有意な差が見られた(P<0.02)。これらの結果はACFの形成抑制がNS-398による細胞増殖抑制によることを示唆するとともに、最近NSAIDがアポトーシスを誘導する報告がされているが、NS-398のアポトーシス誘導による可能性も考えられた。
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