肺小細胞癌の培養細胞は形態学的にclassic typeとvariant typeに分類される。前者ではAPUD系細胞に特徴的なAADC活性が高く、後者ではその活性が低い。またclassic typeの肺小細胞癌は予後が比較的良好であり、NSE濃度の高い例は予後が不良であるなどの特徴を有する。肺小細胞癌はその神経内分泌分化能によっても特徴づけられていて、発生母地は、神経分泌顆粒の存在するもののあること、L-dopa decarboxylase活性の高いものがあること、ADH、ACTH等の神経ホルモン分泌能を有するもののあることなどを根拠としてneuroectodermal originの範疇に加える考え方があるが、数多くの研究結果から、神経内分泌分化能を有する気管支上皮を起源とする意見が支配的となってきている。今回我々が解析に用いたNF1遺伝子は17番染色体長腕上に存在し、その構造中にG-protein related domain(GRD)があり、この領域内でのaltemative splicingにより二つの異なる転写産物typelとtypellができることは佐谷らにより報告されている。RT-PCRによって両転写産物の発現比を細胞株間で比較し、肺小細胞癌の形態学的分類との相関を解析した。classic typeの細胞株ではtypel/ll比が高く、variant typeでは低い傾向が明らかであった。スプライシングの生じるこの領域が活性型ras遺伝子の不活化に関与する領域、すなわちGRD中にあるので、肺小細胞癌の分化度と深く関連していることは興味深い。本研究では、肺小細胞癌において分化度と密接に関連するマーカーとしてNF1遺伝子のalternative splicingのパターンの有用性を示した。
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