NF1遺伝子発現におけるtypel/ll比を人為的に変化させて分化誘導刺激との関連をみることでNF1遺伝子の発現様式が原因的に働いているかどうかを知る実験を行った。typel-mRNA あるいはtypell-mRNAのみを選択的に発現するプラスミドベクターを作成し、トランスフェクションで細胞形態の変化を含む表現系を変化を検討した。ラミニンによっておこるフラスコ壁接着性、神経様突起形成、typel/ll比の逆転などは、数時間から比較的急速に起こる変化であるので、それに対応した可発現誘導性プロモーターをもつプラスミドが必須となる。温度感受性あるいはテトラサイクリン誘導性のプロモーターでの発現調節は比較的これに適した結果を得た段階まで実験は進んだ。 分化誘導前後の細胞の転写産物の差し引き(サブトラクション)からRB遺伝子発現の有無によって左右される標的遺伝子をクローニングすることを試みた。細胞表面からラミニン受容体を介して核内にシグナルが行くことになるが、核内でRB遺伝子を巻き込む経路を我々は推定している。核内での調節が統合され、再び細胞質のシグナル伝達系を遡って表現型に到達する段階の遺伝子群を目標にdifferential RT-PCR法によってクローニングした。クローンについては既知の遺伝子はなく、2クローンについて追跡解析が必要である。臨床材料におけるalternative splicingのパターンは培養細胞ほど明確な結果は出なかったが、再発例などでは明らかに分化度の低下とともに、typel/ll比の変動が見られる場合が11例中2例にみられた。腫瘍内での微少環境での評価が必要とも考えられる。
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