腫瘍組織において、副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)の発現と局在、オステオポンチン受容体であるαvβ3 integrinの発現と局在を病理組織学的に検討した。乳癌転移症例を用いた検討ではαvβ3 integrinの発現が転移臓器特異性を示すことを示唆する知見を得た。更に、手術、剖検材料を用いて腫瘍のαvβ3 integrin発現と臨牀的な骨転移との相関について臨牀病理学的検討を行い、腫瘍細胞の産生するPTHrPは骨芽細胞を介して破骨細胞を活性化して骨吸収を促進し、さらに吸収窩に露出する骨基質蛋白のひとつであるオステオポンチンと腫瘍細胞との結合がαvβ3 integrinを介して行われている可能性を示す結果を得た。過去の病理組織標本を用いて、αvβ3 integrinについては組織分子雑種法で、PTHrPについては免疫組織化学法にて、これらの発現や局在を腫瘍の組織型や分化度との関連において解析するとともに骨転移の有無や転移巣毎の比較検討を行なった。組織分子雑種法については、通常のホルマリン固定パラフィン包埋の病理組織標本に対して施行可能なように、更に骨転移巣についても通常の脱灰標本を検討に供することができるようにブロモデオキシウリジン標識した独自のプローブを作成し、より高感度な系で組織分子雑種法が行えるよう方法を改良も行った。生化学的にRT-PCRを用いた症例解析を行い、組織分子雑種法という形態学的観察を補強しながら実験を遂行し、多くの研究論文と症例解析の報告を内外の学術誌に掲載した。
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