研究概要 |
1.hnRNPタンパク質に対する自己抗体のスクリーニング 無作為に選んだ抗核抗体陽性の患者血清136例の結果を集計すると,SP120を認識する血清は7例(5.2%)あったが,いずれもmonospecificではなく抗体価も低かったため,SP120の機能解析に応用できるような抗体は未だ得られていない.疾患の種類との対応関係も不明である. 6例の血清(4.4%)は150kDaのタンパク質(p150)を認識し,このうちの1つは高力価のmonospecificなものであった.この血清を用いてヒト培養細胞の蛍光染色を行うと,抗RNP抗体の場合と同様のspeckled型の核内染色像が得らた.核マトリックス標品を用いても同じような染色パターンを示すことから,p150はSP120と同様に核マトリックスに結合しているものと思われる.p150の一部は30S hnRNP複合体に結合しており,p150が未知のhnRNPタンパク質である可能性が示唆された. 2.マウスにおける加齢と抗SP120抗体価 月齢が異なる3群のC57BL/6マウス個体から採取した血清のSP120に対する抗体価をイムノブロット法で測定した.4週齢ではほとんどの個体が抗体陰性で,陽性のものでも抗体レベルは低かった.29月齢になるとすべて陽性となり,約30%の個体はとりわけ高い抗体価を示した.17月齢のグループはこれらの中間的な値を示した.この実験から,加齢に伴いSP120に対する自己抗体が産生されることが明確になった. 3.抗SAR抗体 3種類のSAR(マウスIg κ遺伝子,出芽酵母のCEM3,ショウジョウバエのFtz遺伝子由来)をプローブとして抗核抗体陽性患者血清のSAR結合能を測定したところ,すべてのSARについて患者血清は健常人血清に比べて有意に高いSAR結合能を示した(p<0.001).相関分析を行うと,SAR相互間に高い相関が認められたが,SAR結合能と1本鎖および2本鎖DNA抗体価,総IgG量との間の相関は低かった.患者血清から精製したIgG画分はすべてのSARを強く結合した.また,Ftz SARを固定化したセファロースは患者血清中のIgGの一部を特異的に結合した.これらの結果から,1)抗核抗体にはSARに共通したDNA高次構造を認識するIgG抗体が含まれ,2)抗SAR抗体は今までに知られている抗DNA抗体とは異なる分子種であると結論した.
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