研究概要 |
1.p53遺伝子変異の及ぼす細胞への効果 1)変異P53遺伝子(mp53)をヒト正常細胞に導入し,mp53を発現するクローンを得た.この細胞はmp53を導入していない対照細胞に比べ約20%の寿命の延長がみられた.また,この細胞を43回継代後,染色体を調べた結果,すべての細胞に染色体の異常が認められた.しかし,これらの細胞は不死化しなかった. 2)mp53を導入した細胞にX線を照射すると,6チオグアニン耐性の変異細胞の出現率が有意に上昇した. 以上の結果より我々は,(1)mp53がヒト正常細胞の寿命を延長させるるが,(2)しかし,mp53のみではヒト細胞は不死化しないこと,(3)mp53は染色体/遺伝子の不安定性を起こすこと,を結論した. 2.p53遺伝子変異の結果おこるp53遺伝子下流の遺伝子変化 Sdi1およびmdm2遺伝子の発現が殆どみられなくなる.しかし,cycline A,B,D,ckk2,cdk4などの発現の変化は認められなかった.このことは,変異p53を導入された細胞の増殖は維持されることを示している. 3.p53遺伝子変異のヒト細胞の不死化におよぼす効果 mp53を導入した細胞は細胞の分裂寿命が延長し,染色体の異常をおこしたが不死化しなかった.しかし,この細胞を放射線あるいは化学発癌剤で処理すると不死化した.同じ処理を正常細胞におこなっても細胞は不死化しなかった.このことはmp53はヒト細胞を不死化させ易くする効果があることを示している.
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