慢性関節リウマチ関節腔における多核球優位の細胞浸潤機構を解明するこれまでの我々の研究過程で、単球特異的な遊走抑制因子の存在が明らかとなり、その因子は補体由来のC4aアナフィラトキシンと同定された。次いで、C4aの抑制作用は、単球自身からサイトカインの一種と思われる単球遊走抑制因子の放出を促すことにより発現されていることが見い出された。そこで、今回は、C4aのこの作用を更に確認するとともに、C4a刺激によって遊離される単球由来の単球抑制性サイトカインを分離精製し、性格付けを行うことを目的とした。 まず、C4aのカルボキシル末端の7個のアミノ酸より成るペプチド及び、末端のアルギニンを持たないdesArgペプチドを合成した。前者は10^<-10>Mの濃度で、C4a10^<-16>Mで見られる単球抑制作用をよく再現した。しかし、後者にはこの作用が全く認められなかった。これはC4aとC4adesArgを比較した場合と同じ結果であった。以上より、C4aが、単球自身からの単球走化性抑制因子放出惹起能を持つことが確認された。 次に、ヒト単球系細胞株(U937)を2L培養し、蛋白非含有培養液中で30分間10^<-16>MのC4aで刺激し、サイトカイン様の単球抑制因子を分泌させた。この上清中において抑制因子はDNAと結合した巨大分子として存在し、見かけの等電点は3.0であった。これをDNaselで処理したところ抑制活性は分子量4〜6万、等電点6.1に変異した。蛋白分解酵素処理では抑制活性が消失した。 次に、DNasel処理サンプルから、高速液体クロマト法を用いて抑制因子を精製した。ペプチドシークエンサーを用いてアミノ末端部アミノ酸配列を明らかにしようとしたところ、末端のαアミノ基が何らかの化学修飾を受けているらしく、配列の解明はできなかった。従って、このサイトカイン様抑制因子と既知のサイトカインとの異同は今回の研究では判別できなかった。
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