平成7年度は、肺内分泌細胞の同定方法の開発、胎仔肺器官培養系で中和抗体およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いての肺内分泌細胞の分化・増殖の阻害実験を行った。 1)肺内分泌細胞を同定するために、生物学的に重要な物質の組織化学的な検索をしたが、nueral cell adhesion molecule (NCAM)の他に、calcium binding protein (calbindin D28K)、GTPbinding protein(Goα)、protein kinase Cαなどが、特異的に発現することが明らかになった。 2)ハムスター胎仔肺器官培養実験にて、E-cadherinおよびNCAMの中和抗体を用いて、肺内分泌細胞と肺形態形成への影響を調べた。NCAM中和抗体により若干の形態形成の遅れと肺内分泌細胞(特にneuroepithelial body(NEB))の形成の阻害効果が見られ、NCAMが肺内分泌細胞の分化の調節にあたっていることが考えられ、同時に観察された若干の形態形成の遅れは、肺内分泌細胞の胎仔肺の発育促進作用の障害を介していることと想像された。また、糖鎖抗原(stage specific antigen-1;SSEA-1)と肺形態形成との関係をこの実験系を用いて検討したが、SSEA-1の発現様式はin vivoの様式を模倣し、形態形成の進行と関連していることが示されたが、肺内分泌細胞との関係はなかった。 3)ハムスター胎仔肺器官培養実験にて、epidermal growth factor(EGF)、calcitonin generelated peptide、NCAMなどに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを添加して、肺の形態形成や内分泌細胞の発生様式の変化を検討したが、著変なかった。例えば、EGFについてはアンチセンスオリゴヌクレオチドにより形態形成が阻害されることが報告されているが(Seth et al.1993)、追認できなかった。今後は、phosphorothioate処理したアンチセンスオリゴヌクレオチドで実験を試みる予定である。
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