研究概要 |
1.ハムスター胎仔肺器官培養実験法を用いて、neural cell adhesion moleculeおよびepidermal growth factor(EGF)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによる肺内分泌細胞の分化増殖への影響について検討したが、これらによる形態形成の阻害、内分泌細胞出現の阻害など認められなかった。アンチセンスオリゴヌクレオチドの投与方法について、カチオン化リポゾーム等の併用も試みたが、形態の変化や内分泌細胞の出現様式への変化は認められなかった。 2.ハムスターでは、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどについての既知の分子生物学的な情報が少ないことから、ハムスターのかわりにマウス(A/J)を用いた器官培養系を確立した。胎令12日の肺を用いて、ハムスターと同様の血清無添加合成培地にビタミンCを添加したもので、培養2日で内分泌細胞の出現を見ることが出来た。マウスの実験系では、内分泌細胞の同定は、protein gene product(PGP)9.5が有用であった。 3.マウス胎仔肺器官培養実験法を用いて、各種増殖因子の過剰投与に対する肺の形態形成、細胞増殖、および内分泌細胞の分化増殖への影響について検討した。用いた因子は、EGF,acidic fibroblast growth factor(FGF),およびbasic FGF,keratinocyte growth factor(KGF),hepatocyte growth factor(HGF),insulin growth factor-Iおよび-II,nerve growth factor,platelet derived growth factor-AAおよび-BB,transforming growth factor β,およびamphiregulin。EGF,acidic FGF,HGFにより肺は形態形成を軽く促進され、一方、basic FGF,KGFにより、形態形成は抑制された。内分泌細胞の出現数を、PGP9.5による免疫染色で算定すると、形態形成へ影響を示した増殖因子により(それが促進であれ抑制であれ)、内分泌細胞の出現は抑制された。肺内分泌細胞の出現を促進する増殖因子は見いだせなかった。以上、肺内分泌細胞の出現には、増殖因子の調節が起こりうることがわかった。
|