TNF遺伝子にはRFLP法あるいはマイクロサテライト法で認められる遺伝子多型が存在している。この多型がTNF産生に影響を与えるか否かを解析するためには、遺伝的背景を同一にし、TNF遺伝子型のみが異なるマウス系の確立が必要である。この目的のために、TNF遺伝子ハプロタイプがz型であるNZWマウス系にd型およびb型のTNF遺伝子を導入したNZW.PL(d型)、NZW.D(d型)、NZW.B(b型)コンジェニックマウス系を樹立した。これらのマウス系のTNF遺伝子多型をマイクロサテライト法で確認したところ、z型、d型、b型には各々多型が認められ、コンジェニックNZWマウス系の樹立が確認された。 樹立した各マウス系の血中TNF量および腹腔から得られたマクロファージの培養上清中のTNF産生量をTNF感受性の細胞株を用いたバイオアッセイで測定したところ、z型のマウスで最も低く、b型およびd型では有意に高いことが明らかとなった。ELISAによるTNF量の測定は、種々の抗TNF抗体を用いて検討したが感度が低いため、本研究では全てバイオアッセイで測定を行った。 自己免疫疾患の発症が主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のハプロタイプに左右される現象が、MHC遺伝子に連鎖したTNF遺伝子の多型に伴うTNF産生能の違いで生じる可能性が示唆されている。本年度の主な目標は、この点を明らかにすることにある。そこで、樹立したNZWコンジェニックマウス系とNZBマウスを交配した(NZBxNZW)F1コンジェニックマウスを生産し、各マウス系での腹腔マクロファージのTNF産生能、血中TNF量と自己免疫病態との関係を解析した。その結果、各F1マウスのTNF値はある程度自己免疫病態に影響を与えたが、その効果はTNF遺伝子に連鎖したMHC classII分子の遺伝子型による影響に比較して、極めて弱いものであった。
|