研究概要 |
造血組織においてマクロファージは赤芽球島を形成し,赤芽球造血の主要な微小環境を構築していると考えられる.今回,マクロファージを組織より一時的・選択的に枯渇させるdechloromethylene diphosphonate (MDP)封入リポソームをマウスに静注し,その造血への影響を検討し,マクロファージの造血における役割を考察した.8週齢のBalb/cマウスをMDP,リポソームおよびMDP封入リポソーム投与群に分け,それぞれの脾臓および骨髄を免疫・血液組織学的手法を用いて比較検討した.MDP封入リポソーム投与1日後すでに赤脾髄のF4/80^+マクロファージは著減し,特に造血巣と関係の深いForssman抗原陽性マクロファージは完全に消失した.マクロファージの消失と共に赤芽球系造血巣もほとんど消失したが,顆粒球系造血巣や巨核球は存続した.コントロール群(MDPのみあるいはリポソームのみの投与では赤芽球系造血の消失は認められなかった.MDPCR法封入リポソーム投与の赤血球造血抑制効果を確認するために,脱血したマウスにMDP封入リポソームを投与したところ,脱血による赤芽球系造血の亢進は赤脾随において完全に,骨髄においても中等度抑制された.これらの赤芽球造血抑制効果は抗band3モノクローナル抗体による免疫組織化学および抗α_4インテグリン抗体と抗赤血球抗体による二重染色を用いたフローサイトメトリーにより確認された.一方,肝臓においては,MDP封入リポソーム投与後マクロファージの著減がみられたが,脱血マウスにこれを投与した場合には,通常はみられない赤芽球コロニーが出現した.以上の結果より生体内においてマクロファージは赤脾髄・骨髄において赤芽球島を形成することによって赤芽球造血に重要な役割を演じていると考えられる。
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