ジストロフィン裏打ち構造をジスロトフィンと共に構築しているジストロフィン結合タンパク質は、その生化学的および分子生物学的研究から、ジストログリカン、サルコグリカン、シントロフィンの3グループに分類されることとなった。代表および分担研究者はこの分類研究および新しいジストロフィン結合タンパク質のcDNAクローニングに関与した。当該研究の目的であるジストロフィン遺伝子を導入したマウス骨格筋のジストロフィン裏打ち構造修復については、この新しい結合タンパク質を含めた3グループのタンパク質の相互発現を調べることが必要となったので、本年度は、新しいジストロフィン結合タンパク質(δサルコグリカン)の抗体を作成し、1.正常およびmdxマウスでの発現を調べる。さらに、2.筋芽細胞注入移植法によりジストロフィン遺伝子を導入したmdxマウス骨格筋での発現を調べることを計画実施し、以下の知見を得た。 1.δサルコグリカンの抗体は、cDNAをもとに大腸菌に作らせたタンパク質を抗原としてモルモットに免疫して得た。この抗体を用いて免疫組織化学法で筋組織を調べ、正常マウス筋では筋細胞膜に存在するが、mdxマウス筋では発現が減少していることを明らかにした。 2.筋芽細胞を注入移植したmdxマウスのジストロフィン陽性筋線維では、δサルコグリカンの発現も回復していたので、δサルコグリカンは他のジストロフィン結合タンパク質と同様にジストロフィン裏打ち構造に関与していてジストロフィンが発現すると筋細胞膜に保持されると考えられた。
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