Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)やそのモデル動物であるmdxマウスでは、ジストロフィンをコードしている遺伝子に障害があるために正常なジストロフィンタンパク質が作られず、正常な筋細胞膜に存在するジストロフィン裏打ち構造が見られない。ジストロフィン裏打ち構造は、ジストロフィンとそれに結合しているジストロフィン結合タンパク質から構築されている。ジストロフィン結合タンパク質は、その生化学的および分子生物学的研究から、ジストログリカン、サルコグリカン、シントロフィンの3グループが明らかになった。 当該研究においては、前年度までにジストロフィン遺伝子を筋芽細胞注入移植法で導入したmdxマウス骨格筋におけるジストロフィンとこれらのジストロフィン結合タンパク質の出現を調べて、ジストロフィン裏打ち構造修復を検討して来た。 本年度は、上述した3グループには属さないタンパク質であるが筋肉に特異的に発現しているカベオリン-3が、ジストロフィンと結合してジストロフィン裏打ち構造を構築するタンパク質の一つとしてクローズアップされてきたので、まずカベオリン-3のDMDおよびmdxマウス筋での発現を調べた。 ジストロフィンの発現していないDMDおよびmdxマウス骨格筋でも抗カベオリン-3抗体で形質膜が染色された。 次にカベオリン-3がジストロフィンに結合しているのか否かに注目して主に焦点レーザー顕微鏡および電子顕微鏡を用いて両者の共存性を調べた。ヒトコントロール筋におけるジストロフィンとカベオリン-3との二重染色の共焦点レーザー顕微鏡像では、両者が重なって存在する部分があった。5nmおよび10nm金コロイドラベルの二次抗体を用いた免疫電顕像では、ジストロフィンの近傍にカベオリン-3が観察されるものがあった。また、精製したジストロフィン複合体のwestern blottingでは、分子量約22kDaのシングルバンドが抗カベオリン-3抗体で検出された。 しかし精製過程で減少する傾向がみられた。これらの結果から、カベオリン-3はジストロフィンに結合しているものとそうでないものが存在するかあるいは結合が弱いと考えられる。さらに、mdxマウス骨格筋では、カベオリン-3との関係においてユートロフィンがジストロフィンの代わりをしていると考えられる。
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