1.既に樹立しているヒト胃癌ヌードマウス自然転移株(GLM-1)に加えて、期間中に新たにヒト胃癌ヌードマウス転移株(GLM-2)を樹立した。また、ラット前立腺癌細胞株(PLS30)を新たに樹立し、これにLacZ遺伝子を導入し微少転移モデルを作製した。これらの細胞はいずれも大小の細胞魂として血流中を移行し、血管外脱出する前に主として血管内で管内性増殖をし、転移巣を形成することがX-Gal染色とbrdUの二重染色から明らかとなった。この事実は内皮細胞との接着を介したサイトカイン刺激により癌細胞表面のインテグリンが活性化され、癌細胞が血管外に遊走し、増殖を開始するという従来の白血球遊走モデルでは説明できない。癌の転移様式は多様であり、白血球モデルとは異なった二次腫瘍(転移)形成の分子機構が存在する可能性が強く示唆された。 LacZ遺伝子導入マウスLewis肺癌細胞を用いた転移の初期過程の解析から本株は上記白血球遊走モデルに類似した転移様式をとることが明らかになった。本細胞による実験肺転移はフイブロネクチン由来のRGDSペプチドではなく、ヘパリンの前投与により強く抑制された。このことから本細胞の転移巣における定着にはインテグリン以外の細胞表面受容体(Syndecan)が関与している可能性が強く示唆された。 ヒト胃癌転移株(GLM-1)からの培養細胞株の樹立をこれまでに数回にわたって試みたがいずれも10代前後の継代で増殖を停止し、未だ株化に至ってない。また、ヒト株非転移株(HSC-39、浮遊細胞系)へのLacZ遺伝子の導入についても発現の安定した株は得られておらず、今後も遺伝子導入の方法を改良するなどして継続して分離を試みてゆく予定である。
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