研究概要 |
1)正常マウスからの腸管上皮間リンパ球(IEL)の分離は,通常どうりEDTA存在下で腸管細胞を集め,ナイロンウ-ルカラムとPercoll密度勾配遠心を用いることにより比較的うまく行われた。糞線虫,N. brasiliensis感染マウスからのIELの分離は腸管粘液量が多く,回収率が極端に減少する問題があった。しかし,摘出腸管を80ml以上の緩衝液で十分に洗浄した後,EDTA存在下で集めた細胞を5‐6回洗浄してから上記の操作を行なうことにより回収率はかなり改善された。それでも,N. brasiliensis感染マウスからのIELの回収は,糞線虫感染マウスからのそれよりも悪かった。2)フローサイトメトリーによる分析で,IELはCD4^+,8‐10%;CD8^+,85‐90%;γδTCR^+,60%を含むことが分かった。これは,腸管膜リンパ節細胞のCD4^+,47%;CD8^+,23%;γδTCR^+,5%とは際立った違いを示した。糞線虫感染によりIELのCD4^+の割合は約2倍に増加し,CD3^+,CD8^+の割合は減少した。糞線虫感染とN. brasilensis感染で,CD3^+,CD4^+,CD8^+,γδTCR^+の割合に関しては根本的な差は検出されなかった。3)RT‐PCRによる糞線虫感染マウスIELのmRNAの検出では,Th2タイプのIL‐4mRNAは正常IELにはほとんど検出されないが,感染7日目には顕著に増加した。Th1タイプのIFN‐γmRNAは正常IELに検出され,感染によってもほとんど変化がなかった。肥満細胞増殖に関与すると考えられるサイトカインに関しては,IL‐3mRNAは正常IELにはほとんど検出されないが,感染7日目には顕著に増加した。SCFmRNAは正常IELに検出され,感染によってもほとんど変化がなかった。IL‐10mRNAは正常,感染IELともに検出されなかった。感染によりIELのIL‐3mRNAが顕著に増加することから,腸管局所の粘膜肥満細胞の増加にはIELが関与しているものと思われる。4)N. brasiliensis感染では腸管粘液分泌量が多いと思われる結果が得られたので,N. brasiliensis感染における粘液分泌機構について検討をした。その結果,杯細胞からの粘液分泌がCD4^+細胞により調節されていることが示唆された。
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