研究概要 |
糞線虫,N.brasiliensis(Nb)感染マウスからの腸管上皮間リンパ球(IEL)の分離は,回収率が低いことが分かった。糞線虫感染マウスIELの平均回収率は正常マウスの40%以下(n=5),Nb感染マウスについては6%以下(n=8)であった。これは,感染により腸管粘液量が増加するためと,腸絨毛が短くなることによりIELが減少するためと思われる。IELの回収に費やす労力と得られる結果のバランスを考え,Nb感染ピーク時のIELを回収し,mRNAを測定することを断念した。Nb感染3日目のマウスIELに,少量のIL-4mRNAが検出されたが,IL-3mRNAが検出できなかった。 非感染マウスの腸管膜リンパ節細胞数は12.9【plus-minus】5.7×10^6(n=6)であった。糞線虫感染では7日目にそれが2.6倍に増加したが,Nb感染では1.8倍に留まった。腸管膜リンパ節細胞についてT細胞ポピュレーションの実数を見ると,糞線虫感染5日目にCD4^+細胞がNb感染5日目のそれより1.9倍多くなっており,感染7日目にはCD8^+細胞が糞線虫感染でNb感染の2倍となった。 当初,ELISPOTによりサイトカイン産生の細胞レベルでの分析を予定したが,フローサイトメトリーで細胞内サイトカインを測定することにより,簡便に同様の情報が得られることが分かったので,感染マウスの腸管膜リンパ節細胞を用いて検討を行った。細胞内にIL-3を含む細胞は糞線虫感染とNb感染で共に7日目に増加した。IL-4含有細胞は糞線虫感染5日目に増加したが,あまり顕著な変化ではなかった。IFN-γ含有細胞は二つの寄生虫感染により変化が認められなかった。TNF-α含有細胞は糞線虫感染とNb感染で明らかな違いが認められた。糞線虫感染ではTNF-α含有細胞の割合が顕著に減少するが,Nb感染ではそれ程減少しなかった。 糞線虫感染とNb感染において腸管膜リンパ節のT細胞サブポピュレーション数とTNF-α産生に違いがあることが分かった。それらがどのように二つの異なる排虫機構に関るのか,今後の問題として興味が持たれる。
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