研究概要 |
皮膚リーシュマニア症では感染部位において、まず腫瘤が形成され続いて潰瘍が形成される。我々は先天的に機能的T及びB細胞の欠失したC.B-17-scid(SCID)マウスを用いた実験によりこの潰瘍形成過程におけるT及びB細胞及びサイトカインの関与を解析した。マウスはSCID及びC.B-17(雄、6週齢)を用い、Leishmania amazonensis(MPRO/BR/72/M1845)promastigote 1×10^7を尾根部背側に皮内接種した。SCID、C.B-17両マウスに腫瘤が形成されたが病変部の大きさ(底辺部の長径×短径)には感染後9週目まで差は認められなかった。一方C.B-17マウスの病変部においては感染後6週目までに全頭潰瘍形成が認められたが、SCIDマウスにおいては潰瘍の形成は認められなかった。次にリーシュマニア感染SCIDマウスにリーシュマニア感染及び非感染C.B-17脾臓細胞1×10^7個を感染後10週目に腹腔内に移入したところ、各々移入後7及び12日目には全頭病変部に潰瘍形成が認められた。これらマウスの皮膚病変部におけるIL-1〜6,10,12,TNF,IFN-g,GM-CSFの発現を皮膚病変部より抽出したRNAを鋳型としてRT-PCR法により検索したところ、SCIDマウスにおいてはリーシュマニア感染前には調べた何れのサイトカインの発現も認められなかったのに対し、感染後にはIL-1,10,IFN-γの発現が認められ、非感染脾臓細胞移入後においてはさらにIL-2,3,6,TNFの発現が認められた。感染C.B-F17皮膚病変部ではすべてのサイトカインの発現が認められた。これらのことからリーシュマニアにおける腫瘤形成にはT及びB細胞は関与しないが潰瘍形成にはこれらの細胞が不可欠であることが示された。また、今回認められたサイトカインの変動は一連の病態変化と密接に関連していると考えられた。
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