研究概要 |
寄生虫感染のうち,マラリアなどの原虫感染は、宿主Th1優位の,フィラリアなどの蠕虫感染はTh2優位の反応を示すことが知られている。そしてTh1,Th2サブセットの活性化のバランスによって感染感受性が規定されていると考えられている。本研究は、これらの事実関係を基に、Th1,Th2活性化機構を,IL-4,IL-5を中心としたサイトカインおよびそのレセプターの発現増強、それが寄生虫感染の感受性や好酸球の分化、高IgE血症へと導かれる機序について研究を行った。 平成7年度には、われわれは、フィラリアBrugia pahangi感染幼虫(L3)をX線照射による弱毒状態で感染しておき、マラリアPlasmodium bergi(ANKA strain)を後から感染すると、宿主はマラリアに対して抵抗性を示すことを明らかにした。すなわち、コントロール群では、マラリア感染2週間以内にすべて死亡したが、フィラリア免疫マウス群では、マラリア感染後4週間以上生き続けていた。これらの結果は、マウス脳マラリアへの感受性がフィラリア抗原によって抑制的に調整されたものと思われる。また、フィラリア感染において虫の宿主体内過程で、肥満細胞前駆細胞を刺激して、IL-4が増加すること。これがTh1とTh2のバランスをくずし、Th2優位の反応になることを明らかにした。一方、ヒト脾細胞一精製イヌ回虫幼虫抗原の系では、健常人においてもイヌ回虫抗体価とは無関係に、幼虫抗原に対して各種サイトカインmRNA発現を伴う増殖反応を示すことを認めた。このことは他の線虫抗原(感染)による非特異的交差反応によるものと思われるが、この増殖反応はイヌ回虫症の防御に関わっている可能性も考えられた。
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