我々は、犬糸状虫症患者血清と反応するimmunodominant antigenをコードするcDNA(cD34)およびゲノムDNA(Dg2)をクローニングし、この遺伝子は幼虫特異的に発現するstage-specificityを示すことを以前報告した。Dg2の発現制御機構を解析するために必要な上流領域をクローニングするため、新たに作成したgenomic DNA libraryをcD34のexon1およびexon2の一部を含むDNA断片をプローブとしてスクリーニングを行ったところ、5つの陽性クローンが得られた。制限酵素地図を作成したところ、これらはすべて同一の遺伝子であることが判明した。これらのうち2つのクローンより8268bpの塩基配列(DgK)および転写開始点の解析を行ったところ、転写開始点より149bpを除くexon領域の配列はDg2と同じであるにも関わらず、exonの長さ、intronの位置と配列に大きな違いが認められた。ミクロフィラリア、雄および雌成虫より抽出したゲノムDNAを用いたSouthern blot解析およびDg2とDgKに共通なプライマー(長さの異なるintronを挟む)を用いたPCRの結果から、Dg2とDgKは同時には存在せず、ファミリーを構成していないと考えられた。次ぎに、DgKの発現制御機構を解析するため、1837から+1329の領域をCaenorhabditis elegans用レポーターベクター、pPD21.28へ組み込んだプラスミドを作成した。これをC.elegansへ微注入し、11日後にlacZ染色を行ったところ、消化管において特異的に発現している個体が認められた。このことから、C.elegansの系は寄生線虫の遺伝子解析にも利用できるものと思われる。
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