寄生虫のプロテアーゼは、寄生虫の発育・消化、宿主への侵入、宿主免疫系への関与などの機能が報告されている。肺吸虫システインプロテアーゼは、ヘモグロビン分解酵素として知られ、主要抗原であるため、診断用抗原として用いられてきた。宮崎肺吸虫成虫cDNA libraryより抗体によってイムノ・スクリーニングしたクローンの核酸配列を検討した結果、2群の抗原候補クローンが認められた。1群はシステイン・プロテアーゼ、他は熱ショック蛋白に相同性の高いクローンであった。 システインプロテアーゼのコンセンサス配列の確認された5クローンは、制限酵素地図等によりPmal群3クローン、Pma3群1クローン、Pma9群1クローンに分類することができた。Pma3は、全長1026bp、TGAの終止コドンとポリAを持ち、開始コドンは含んでおらず、浜島らの報告しているウエステルマン肺吸虫メタセルカリアのneutral thiol protease cDNA cloneに82%と高い相同性を示した。Pma3の予想されるアミノ酸配列では、システインプロテアーゼのAPEではじまる成熟酵素に相当する配列およびシステイン27、ヒスチジン164、アスバラギン184の中心活性コンセンサス配列を有していたが、プロ酵素部分とsignal peptidesのconsensus cleavage siteであるAla-X-Ala配列を含んでいなかった。アミノ酸配列では、Pma3とウエステルマン肺吸虫との相同性は80.5%と高く、中心活性周辺が特に相同性が高かった。また、肺吸虫のシステインプロテアーゼのアミノ酸配列は、カテプシンLのプロトタイプであるパパインおよび寄生虫と哺乳動物のカテプシンLと最も高い相同性を示した。Pma3とウエステルマン肺吸虫の相同性は、ラットとマウス間のカテプシンLの相同性95.5%には及ばず、ヒトとマウス間よりもやや高い値であった。Pmal群とPma9は、ウエステルマン肺吸虫の相同性は、Pma3より低く、宮崎肺吸虫に特異的なシステインプロテアーゼであることが示唆された。
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