宮崎肺吸虫成虫cDNAライブラリより得られたシステインプロテアーゼは、Pma1群3クローン、Pma3群1クローン、Pma9群1クローンに分類できた。Pma3は、ウエステルマン肺吸虫メタセルカリアのneutral thiol proteaseと高い相同性を示した。また、Pma3群とPma9群も、カテプシンLと最も高い相同性を示し、宮崎肺吸虫に特異的なシステインプロテアーゼであることが示唆された。肺吸虫カテプシンLは、腸上皮細胞から分泌され、腸管でのヘモグロビンを分解し、酸性で活性があることが知られている。今回クローニングしたカテプシンLのクローンは、ライソゾーム系カテプシンL特有の配列を有しておらず、哺乳動物のカテプシンLとは至適pHや産生・分泌などで異なっていることが示唆された。熱ショック蛋白70(HSP70)の3クローンは、いずれも誘導されないハウスキーピングの熱ショック蛋白70(HSC70)と考えられ、アミノ酸配列の特徴からは3クローンとも細胞質型であった。また、N末端のシグナル・ペプチドとC末端の小胞体滞留配列を持たず、蛋白質の輸送や集合に関与していることが示唆された。宮崎肺吸虫のシステインプロテアーゼと熱ショック蛋白70は、宿主によって抗原として認識され、真核生物に依存するこれらの蛋白と異なり、宮崎肺吸虫から体外や腸管から分泌され、宿主-寄生体における免疫反応に役割を果たしていることが示唆された。
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