トキソプラスマ特異的CD8陽性T細胞がトキソプラスマ感染細胞を認識する際の感染細胞内トキソプラスマの転帰を調べる目的で以下の実験を行った。放射線照射処理RH株で免疫したBalb/cマウスの所属リンパ節細胞を同系統のRH株感染腫瘍細胞で刺激し、自己MHC-classl拘束性にトキソプラスマ感染細胞に対して細胞傷害性を示すトキソプラスマ感染細胞特異的CD8陽性T細胞株を樹立した。感染標的細胞内のトキソプラスマ原虫数はPCR法によるトキソプラスマ由来SAG1遺伝子数の計測により算定した。腫瘍細胞をRH株トキソプラスマtachyzoiteと共に2時間培養後非感染tachyzoiteを除いた。この時点を感染直後とし、一万個の感染細胞を単独あるいはトキソプラスマ感染細胞特異的CD8陽性T細胞、マクロファージ等と24時間共培養した。トキソプラスマ感染細胞特異的CD8陽性細胞との共培養24時間後、標的細胞の約80%が傷害される条件下でもトキソプラスマ原虫数は感染直後と比較して減少しなかった。ところが、IFN-_γ処理(100/ml)骨髄由来マクロファージの存在下でトキソプラスマ感染細胞特異的CD8陽性細胞と感染標的細胞を共培養すると標的細胞内のトキソプラスマ原虫数は感染直後と比較して90%減少した。この減少はCD8陽性T細胞の抗原特異性には依存しなかった。 IFN-_γ処理(100/ml)骨髄由来マクロファージの存在下で、H-2^<bxd>ハイブリドーマであるLBを感染標的細胞として抗H-2^bCD8陽性T細胞を共培養したときにも標的細胞内トキソプラスマ原虫数が感染直後と比較して95%減少した。一方、 IFN-_γ処理骨髄由来マクロファージにトキソプラスマを感染させると、トキソプラスマの増殖は顕著に抑制されるが感染24時間後のトキソプラスマ数は感染直後のトキソプラスマ数より減少することはなかった。以上の結果は、標的細胞内のトキソプラスマは細胞傷害性T細胞によるホスト細胞の破壊後も死なないこと、しかし破壊されたホスト細胞内のトキソプラスマの大部分が活性化マクロファージ内で死滅することが示唆する。現在破壊されたホスト細胞内のトキソプラスマが活性化マクロファージ内で死滅する機構についての解析を進めている。
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