研究概要 |
昨年度の研究により住血吸虫ミラシジウムの体表の織毛運動はcAMPにより制御されていることが明らかとなった。本年度はcANPがセカンドメッセンジャーとしてどの様に作用しているのかを明らかにすることを目的とした研究を行った。パラメシウムの研究成果を参考にするとミラシジウム織毛のcAMPの上昇は膜のイオンチャネルの活性化に関与することが推測される。そこで水中を遊泳しているミラシジウムに各種イオンチャネルブロッカーを投与し、ミラシジウムの遊泳速度の減少、又は停止を観察し、また0.9%NaCl液中で遊泳停止したミラシジウムに各種イオンチャネルアクチベイタ-を投与し、その速度を測定した。また貝飼育液により変化するミラシジウムの遊泳運動におよぼすイオンチャネルブロッカーとアクチベイタ-の影響も観察した。 結果は下記のごとくである。 1.Na^+チャネルブロッカー(quinine,quinidine,benzoylheteratisine)はミラシジウムの遊泳速度を低下させ、高濃度で遊泳は停止する。K^+,Ca^<++>,Cl-チャネルブロッカーは遊泳運動に変化を与えない。 2.しかしNa^+チャネルアクチベイタ-(brevetoxin)は0.9%NaCl中のミラシジウムを遊泳させることがない。 3.いかなるイオンチャネルブロッカー、アクチベイタ-も貝飼育液によるミラシジウムの遊泳運動の変化に影響を及ぼさない。 以上の結果はcAMPによりNa^+チャネルが活性させることを暗示しているが、さらに実験条件を改良した観察の必要性を示している。
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