研究概要 |
体表繊毛運動制御機構が自由生活原虫パラメシウムで解明されつつある。本研究の目的はパラメシウムの研究報告を参考にして、住血吸虫ミラシジウムの体表繊毛運動機構、特に環状ヌクレオチドやイオンチャネルと繊毛運動との関係を明らかにすることである。 1)環状ヌクレオチドと繊毛運動の関係 1%NaCl液中にミラシジウムを飼育し、繊毛運動を停止させ、その虫体にcAMP,cGMP濃度を上昇させるために、a)膜透過性cAMP,cGMP、b)adenylyl cyclase,guanylyl cyclaseの活性化剤Forskolin、c)phosphodiesteraseのinhibitor IBMXを投与した。虫体は最も至適な条件下でも水中の遊泳速度の1/6の遊泳速度しか呈さないが、30〜40%の虫体が高浸透圧下でも遊泳を開始する。虫体の遊泳率(繊毛の活性化率)はすべての試薬で濃度依存性である。 2)G-protein、Aキナーゼ、イオンチャネルの繊毛運動制御への関与 a)metazoaではG-proteinに作用しadenylyl cyclaseを活性化するコレラトキシンは繊毛運動を活性化しない。(注:protozoaでは活性化されない) b)水中を遊泳中のミラシジウムにAキナーゼインヒビター(H88,H89)を投与すると虫体の遊泳は停止する。 c)K^+チャネルブロッカー(quinine,α-dendrotoxin)を水中遊泳中のミラシジウムに与えると遊泳を停止する。その効果は濃度依存性である。しかしNa^+チャネルブロッカー、Ca^<++>チャネルブロッカーによるミラシジウムの遊泳運動の変化は見られない。 以上の結果はミラシジウム体表繊毛運動の制御にcAMP,cGMPが関与し、その効果発現にAキナーゼとK^+チャネルが関与することを示している。
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