研究概要 |
先の我々の研究で、トキソプラズマの強毒株であるRH株には二種類のアイソザイム(NTRase-I, NTPase-II)が存在し、それらをコードする遺伝子の全核酸塩基配列が決定されている。また多数の株を用いたNTPaseの反応速度論的解析結果よりNTPase-IIは全ての株に存在するがNTPase-Iは強毒株にのみ存在することが推定されていた。今回、PCR法による遺伝子の増幅実験を行い、上記の減少はそれぞれのアイソザイムをコードする遺伝子の存在の有無と相関することがわかった。すなわち、弱毒株にはNTPase-Iをコードする遺伝子は存在せず、NTPase-IIをコード遺伝子のみが存在することが新たにわかった。また更にmRNAを出さない疑似遺伝子が全ての株に存在することもわかった、これらの結果は米国生化学・分子生物学会誌(J. Biol. Chem.)の1995年の5月号に掲載された。平成7年度は主に遺伝子導入のためのプラスミドの作製を行った。そのためにまずトキソプラズマの虫体内に導入されたNTPase-Iの遺伝子が発現されるようなプラスミドの設計を行った。その後トキソプラズマ遺伝子のコスミドライブラリーよりNTPaseのプロモタ-領域を含む遺伝子をクローニングした。PCR法を用いて必要な各種の遺伝子断片を合成し、それら遺伝子断片を繋ぎ合わせ、機能する遺伝子として構築するための条件を検討中である。Phlomycin耐性遺伝子を組み込んだプラスミドに構築した遺伝子を挿入し、生体内に組み込む予備実験を開始する予定である。また今後の課題として、新たに見つかった疑似遺伝子の存在と病原性との関わりが問題となった。
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