研究概要 |
トキソプラズマには遺伝的にI,II,IIIの三型がありI型が強毒株で、IIおよびIII型が弱毒株である。強毒株であるRHには二種類のアイソザイム(NTPase-I,NTPase-II)が存在し、それらをコードする遺伝子の全核酸塩基配列が先の我々の研究で決定されている。今回、多数の株を用いPCR法による遺伝子の増幅実験を行い、IIおよびIII型の弱毒株にはNTPase-Iをコードする遺伝子は存在せず、NTPase-IIをコードする遺伝子のみが普遍的に存在することが新たにわかった。昨年の研究でmRNAを出さない疑似遺伝子が全ての株に存在すると思われていたが、この疑似遺伝子を持たない弱毒株の存在が新たにわかった。前年度は遺伝子導入のためのプラスミドの作製を行ったが、本年度も継続した。そのためにまずトキソプラズマの虫体内に導入されたNTPase-Iの遺伝子が発現されるようなプラスミドの設計を行った。その後トキソプラズマの遺伝子のコスミドライブラリーよりNTPaseのプロモタ-領域を含む遺伝子をクローニングした。PCR法を用いて必要な各種の遺伝子断片を合成し、それら遺伝子断片を繋ぎ合わせ、機能する遺伝子として構築するための条件を検討した。Phlomycin耐性遺伝子を組み込んだプラスミドに構築した遺伝子を挿入し、生体内に組み込む実験を開始した。しかしながら、弱毒株にNTPase-Iを発現させることには成功していない。これはやはり疑似遺伝子が関与していると思われ、今回新たに見つかった疑似遺伝子を持たない弱毒株を用いて検討が必要と思われる。
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