新たに開発した発現ベクターを用い、赤痢アメーバに対するヒトモノクローナル抗体の作製を試みた。また、ベクターの評価を目的に、ハイブリドーマを出発材料にして大腸菌によるマウスモノクローナル抗体の作製について検討した。 1.マウスFabの作製 赤痢アメーバ表面の150-kDa抗原を認識するマウスモノクローナル抗体EH3015(κ型L鎖を持つlgG1)を産生するハイブリドーマよりmRNAを単離した。マウスFab増幅用のプライマーを作製し、γ_1型H鎖のFd領域とκ型L鎖をコードする遺伝子をRT-PCRにてそれぞれ増幅した。増幅産物を組み込んだ発現ベクターから、ファージの外被蛋白をコードするGIII部分を除いて大腸菌に導入し、可溶性のFabとして発現させた。このFabは、ELISA、間接蛍光抗体法、ウェスタンブロット法において、ハイブリドーマが産生する抗体と同様の特異性を示し、in vitro系において赤痢アメーバのヒト赤血球に対する接着能と貧食能を抑制できた。従って、このベクターは抗体遺伝子の発現に有用であると思われた。 2.ヒトFabの作製 赤痢アメーバに対して比較的高い抗体価を持つヒトのリンパ球からmRNAを単離し、ヒトのH鎖(γ)とL鎖(κ、λ)のFab領域をコードする遺伝子を増幅した。κ鎖とγ鎖をコードする遺伝子断片を発現ベクターに組込んで大腸菌にトランスフォームし、ヘルパーフォージを感染させてファージディスプレイライブラリーを作製した。赤痢アメーバの粗抗原を用いて3回のパニングを行った後、GIII部分を除いて大腸菌に導入し、可溶性のFabとして発現させた。弱陽性も含めると、約42%のクローンが抗赤痢アメーバヒト抗体を産生していることが確認された。
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