研究概要 |
本研究において、性フェロモンによってその接合伝達能が誘導され、液体培地中でも高頻度の接合伝達を行うことができる腸球菌プラスミドpPD1の接合伝達に関する遺伝子群を明らかにすること、特に高頻度伝達の原因である性フェロモンに反応するための遺伝子群の解析を行うことを目的とした。それら遺伝子群の解析を行うにあたりまず突然変異体の単離を行う必要があった。そこで、Tn917, Tn917lac, Tn916を用いた突然変異誘発を行い、得られた多数のトランスポゾン挿入変異株の中から性フェロモンに関係なく自己凝集を行う株を単離した。次にそれら変異株よりプラスミドDNAを抽出し制限酵素を用いトランスポゾン挿入位置を決定し性フェロモンに対する反応に関与する遺伝子のマッピングを行った。その結果、性フェロモンに対する反応を司る遺伝子領域のおおよその位置が明らかになった。さらに性フェロモンに対する反応を司る遺伝子領域は比較的狭い領域であることが示唆されたので、その領域を含むDNA断片の塩基配列を決定した。その結果、性フェロモンに対する反応を司る遺伝子領域に存在するオープンリーディングフレーム(ORF)のうちいきつかはpAD1の遺伝子と高い相同性が観察された。しかし、遺伝子の並びが異なっていたり相同性が低いORFが見られたりと、pPD1の独自性も示唆された。さらに得られたトランスポゾン挿入変異株の中から腸球菌の病原性因子の一つであるバクテリオシンの突然変異体が単離されバクテリオシン遺伝子の位置が明らかになった。これら突然変異体は今後の病原性因子の解析に用いられる予定である。
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