研究概要 |
平成7年度においてTn917,Tn917lac,Tn916を用いた突然変異誘発を行い、接合伝達能を失った株、性フェロモンに関係なく自己凝集を行う株を単離し接合伝達に関与する遺伝子のマッピングを行った結果、性フェロモンに対する反応を司る遺伝子領域と接合伝達に関する遺伝子領域のおおよその位置が明らかになった。性フェロモンに対する反応を司る遺伝子領域について若干DNA塩基配列を決定した。 平成8年度は、前年度に単離された性フェロモンに対する反応が異常になった突然変異体におけるトランスポゾンの挿入位置を含む領域の全DNA塩基配列(8.5kbp)を決定した。その結果を用いDNA塩基配列のデータベ-ズから相同性の高い遺伝子をスクリーニングしたところ、同じ腸球菌プラスミドであるpAD1やpCF10の性フェロモンに反応するための遺伝子群とアミノ酸レベルの相同性が見いだされた。遺伝子構成はよく似ており、特にpCF10と似ていることが明らかになった。 それら遺伝子群のうちpAD1におけるtraA遺伝子は性フェロモンによる信号伝達と接合伝達系の誘導を司る遺伝子とされており、接合伝達系のリプレッサーと考えられている。しかしながらpCF10においてはこれに対応する遺伝子の機能が明らかになっておらず、pPD1におけるtraA遺伝子の機能を明らかにすることにした。カナマイシン耐性遺伝子を用い、traA遺伝子に対しsite-directed mutagenesisを行ったところ、得られた突然変異体は恒常的に接合伝達系が発現していた。この結果からpPD1においても、またおそらくpCF10においても、pAD1のtraAに対応する遺伝子は接合伝達系のリプレッサーであることがわかった。 以上の結果から、多くの点で異なる3種類の性フェロモン反応性プラスミドが極めて似かよった接合伝達系を持っていることが明らかになり、性フェロモンを介した接合伝達系が同じ起源から始まった事が示唆される。
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