Proteus mirabilisは、硬寒天培地上で、遊走活性により特異な同心円集落を形成する。その際、菌は単独では動かず集団を組んで遊走することが知られている。我々は、この菌が、最小栄養培地上では殆ど遊走しないのに、特定のアミノ酸を添加した培地では遊走をし、しかも、アミノ酸特異的な形態の拡がり集落を形成をすることを見いだした。また、化学走性を思わせる菌の表面遊走もみている。菌の拡がり方は、放射状や、螺旋状と様々であり、特定のアミノ酸を感知した菌が、それに応じた集団行動を行なっているものと思われる。このような特徴ある集団行動を、細菌がどのような機構で可能しているのかを解析するのに、マクロ、ミクロにわたってこの集団行動を追跡した。その結果、1)この集団は、たんなる集合ではなく特異な構造性があること、2)構成要素である細菌は絶えず要因交代をしており極めてダイナミックな集団であること、3)そのダイナミックな構造が、異なる集落形態ごと特徴があること、4)長期間培養では、後半に全く異質な集落成長に変化すること、などが判明した。 P.mirabilisを軟寒天培地に接種した場合、菌は更に特異な行動を示す。即ち、一度一様に拡がった菌が、随所で集合行動を行い、直径、0.5-1.0mmほどの集合体を培地上に多数出現させる。何故このような集合行動をおこすのか、未だ不明であるが、集合体の菌は、菌体が短く鞭毛が少なく、長菌多毛で活発に動き回っている集合体外部菌と際だった違いがある。細胞分化と連関した集団行動と考えられ、興味深い。
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