研究概要 |
代表的な非定型抗酸菌であるMycobacterium avium complex(MAC)による感染マウスでの感染2〜4週以降の感染菌の再増殖の機作について,マクロファージ(Mφ)不活化サイトカイン(CK)であるIL-10及びTGF-β並びに感染2〜3週に誘導される抑制性Mφとの関わりの観点から検討した.感染マウスの臓器内での各種CKの蛋白質レベルの推移をELISA法で検討したところ,(1)肺及び脾内TNF-α,IL-10,IFN-γは感染後2〜4週をピークに臓器内CFUの一過性の減少と並行した形で増加し以後速やかに低下すること,(2)TGF-βは肺内レベルでは同様であるが,脾内ではIL-10より遅れて増加し感染8週後でも高値を示すこと,(3)IL-6は検出限界以下に推移すること,(4)これらCKの組織内レベルの増加はrifamycinによる化学療法により有意に抑制されることなどが明らかになった.次に培養腹腔及び脾Mφによる上記CK産生動態についてのELISA法による検討により,(1)MAC感染腹腔Mφでは培養1〜3日にTNF-α,IL-10産生の増強が,培養7〜14日にかけてはTGF-β産生の増強がみられること,(2)MAC感染脾Mφでは培養1〜3日でのIL-6及びIL-10産生の増強が認められるがTGF-βの産生は低レベルに留まること,並びにTNF-αは主に細胞膜結合型として産生されること,(3)MAC感染脾細胞ではTNF-α,IL-6,IL-10,IFN-γ産生の増強が著しいことがなどが明らかになって来ているが,IL-10についてはその産生誘導能はSmT集落株(強毒株)よりもむしろSmD集落株(弱毒株)の方が強く,特にビルレンスとの相関は認められていない.更にMAC感染で脾細胞中に誘導されるサプレッサーMφについては抗CK単クロン抗体を用いての中和実験により,このMφのin vivoでの誘導にはTNF-α,IL-1,IFN-γが,またターゲットT細胞のConA応答能の抑制にはTNF-α,TGF-β及びIFN-γがメディエーターとして働いていることなども明らかになって来ている.以上の成績はMAC感染におけるMφ賦活化CKあるいは抑制性Mφの果たす役割の重要性を強く示唆するものであるが,現在mRNAレベルでの検討を進めているところである.
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