研究概要 |
細胞間接着分子であるICAM-1は,マクロファージ(Mφ)などの抗原提示細胞(APC)に表現されており,これらAPCからT細胞への抗原シグナルの伝達に重要な役割を演じている.最近,L型らい患者の皮膚病変部のkeratinocyteはICAM-1発現を欠くことが報告され,抗酸菌症での宿主感染抵抗性におけるICAM-1の関わりが注目されている.そこでMycobacterium avium complx(MAC)感染培養MφのICAM-1発現の動態について,種々のサイトカイン(CK)による制御との関連からELISA法,flowcytometryならびにRT-PCRなどの方法で検討した.その結果,MAC感染MφのICAM-1発現は培養1〜3日目をピークとして一過性に増強し,以後速やかに定常レベルに復することが分かった.また別の実験により培養3日目以降にみられるICAM-1発現のdown-regulationについては,培養中のnutrient depletionによるものでも,あるいは添加血清中の何らかの成分によるものでもないことが確かめられた.次にCKの関わりについてみたところ,(1)TNF-αは非感染MφのICAM-1発現を有意に増強するが,MAC感染MφのICAM-1発現に対しては特に影響を及ぼさないこと,(2)抗IL-10抗体による中和によっては3日目以降のICAM-1発現のdown-regula-tionの軽度な抑制がみられるに過ぎないこと,(3)TGF-βの添加により培養1〜3日目のICAM-1発現が有意に阻害されるのに対して,培養3日以降のphaseでのICAM-1発現のdown-regulationは抗TGF-β抗体の添加により部分的にblockされること,(4)MAC感染Mφでは培養2〜6時間にTNF-α,TGF-β,IL-10のmRNA発現の一過性の増強がみられるが,他方,Mφを結核菌で刺激した場合にはTNF-α,TGF-βのmRNA発現については同様な傾向が認められるものの,IL-10についてはMACの場合と異なり,24時間以上に亘る持続的なmRNA発現増強が認められることなどが分かった.以上の成績は,感染MφにおけるICAM-1発現のdown-regulationにおいては,特に抑制性CKであるTGF-βの関わりが大きいことを示唆している.
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