黄色ブドウ球菌臨床分離株NMは、電顕的に約50nmの莱膜を保有している。しかし、この株は予想と違い表面の性質は疎水性を示しており、SDSやトリプシン処理では変化はないが、ペプシン処理により親水性へと移行することが分かった。そこで、この疎水性を示す莱膜と関連していると考えられるタンパクの分離精製を試みた。 NM株より細胞壁を分離し、SDSとトリプシン処理を行った後、リゾスタフィンで可溶化した。精製は、Phenyl Sepharoseカラムを用い、硫酸アンモニウム・エチレングリコールのグラディエントにより溶出分画した。得られたものは、約200kDaのものと約160kDaの2種類であり、それぞれをCP-PAおよびCP-PBと名付けた。 CP-PAをアジュバントと共に家兎に免疫して抗体を作製した。この抗体は、細胞壁タイコ酸とは反応せず、CP-PAに特異的であった。電顕的に抗体と反応する局在について検討すると、NM株細胞壁の最外層に反応しているのが観察され、莱膜にこの疎水性タンパクが決挿入していることが示唆された。さらに、精製したCP-PAを解析していくとCP-PAにはタンパクのみならず糖も含まれていることが、糖の定量試験により明らかとなった。これらの結果から、CP-PAは、莱膜多糖と疎水性タンパクが共有結合により結合して構成されているように予想された。このCP-PAのタンパク部分のアミノ酸解析を現在行っており、多糖部分については、分離頻度の高い5型と8型莱膜を構成しているマンノサミンやフコサミンが検出されるかどうかを検討する予定である。また、現在までの結果を、本年6月にフランスで開催される国際ブドウ球菌研究会で口頭発表することにしている。
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